北回帰線(6)について

涙にぬれた口づけです。

ケイシーは就職の面接に出向いた。
大富豪キャリスター家が、秘書を探していると聞いたのだ。
キャリスター家の当主ギルは、ゴージャスな雰囲気を持つ男性でしばしば雑誌の表紙も飾っているらしい。
ケイシーは面接を待つ列に加わった。
だが面接室に入り、机の向こうに座る男性を見て、彼女は凍りついた。
端整で男らしい顔に、嘲るような冷笑を浮かべてこちらを見ている。
ケイシーの耳に、侮辱の言葉が届いた。
「秘書に女性としての魅力はいらないから、君に決めたよ」クリスティーナはフォーチュン・ロックウェル銀行のあるプロジェクトに加わるよう雇われた。
ボスはゴージャスなプレイボーイ、デレク・ロックウェルだ。
過去に苦い経験を持つクリスティーナにとってはセクシーなボスなど厄介なだけだった。
だがともに働くうち、彼女はしだいにデレクに惹かれていく。
そしてある夜、仕事がうまくいったのに有頂天になったあまり、思わずクリスティーナは彼にキスをしてしまう。
それが苦しみの始まりだとも知らずに。
『独身者オークション』の司会を務めていたジェニーは、魅力的な独身男性が次々と落札されていくのを眺めていた。
さえないわたしには縁のないことだわ。
だからオークション終了後、権利証を渡されたときは心底驚いた。
友人たちが一夜のデートをする権利をプレゼントしてくれたのだ。
しかも、相手はエリック・ローガン。
御曹子のプレイボーイで、ジェニーがひそかに思いを寄せていた男性だった。
彼女は困惑しながらもその申し出を受けたが、デート当日、とんでもないことが起きてしまい……。
夫が悲劇的な死を遂げ、サラは息子ベンとともにイギリスに戻ってきた。
できるだけ早く仕事を見つけ、ベンと二人で生きていこう。
亡き夫の弟アレックスがいる屋敷で暮らすことなどできない。
ここは、五年前、あの過ちが起きてしまった場所……。
断固として屋敷から出ていくと言い張るサラに、アレックスは無表情な顔で告げた。
「この四年間、ベンはきみと暮らした。
今度は父親と暮らす番だ」サラはぽかんと口を開けた。
アレックスが秘密を知っていたとは! ここで彼と暮らすなんて、あまりにも危険すぎる。
弁護士のケリーは、仕事を終えて郡庁舎から出てきたとたん、車中にキーをつけたまま、ドアをロックしていたのに気づいた。
急ぎ、守衛に処理してもらおうとなかに引き返すが、守衛の姿はどこにもない。
途方にくれて建物のなかをさまよっていると、やり手の判事のグレイ・コルトンと鉢合わせした。
法廷で彼にいつも冷ややかな視線を向けられているため、ケリーは居心地の悪さを覚えずにはいられなかった。
だが天候はどんどん悪化していき、やむをえず二人は庁舎で過ごすことに……。
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